(1) 津波からの緊急避難場所の整備・管理

・津波浸水想定区域内外に緊急避難場所をできる限り多く確保するため、逃げ地図づくりを通して点検を重ね、関係者の理解と協力を得て避難階段等を整備して避難困難区域を少なくしていく努力が必要である。

・津波からの緊急避難場所は、津波浸水想定区域外の高台に至る避難道路・避難階段又は津波浸水想定区域内の既存施設の屋上等への避難階段を整備することで確保することができる。そのほか、既存の広場を盛土した整備事例も見られる。

 

●参考事例

鎌倉市材木座地区では、逃げ地図づくりワークショップが契機となり、材木座自治連合会の役員らが自ら材料を調達して裏山の斜面に避難階段の踏面とパイプ管の手すりを整備し、高齢者でも容易に登れるようにした。また、避難経路を短縮するため隣地の住民の了解を得て非常時にブロック塀を簡単に乗り越えられる簡易な避難階段を取り付けるなどの自助・共助の取り組みが広がった。

材木座自治連合が整備した避難階段
隣地の住民の協力を得て避難階段を整備した事例

下田市吉佐美地区では、住民らが地区内を点検して緊急避難場所を指定するとともに、緊急避難場所が少ないエリアには住民らが自ら協働して簡易な階段と手すりを整備し、逃げ地図づくりワークショップでその効果と課題を検証した。

住民らが協働して整備した避難階段(下田市吉佐美地区)

・日立市は、日立駅の東側(海側)に位置し、東日本大震災に伴う津波により地区の一部が浸水した旭町地区の避難に関する安全性を高めるため、復興交付金を活用し、狭隘な市道3225線を幅員6mに拡幅整備して避難行動要支援者を乗せた車が交錯せずに円滑に避難できるようにするとともに、高台の日立駅前広場に通じる鋼製の避難階段を整備した。避難階段の整備にあたっては、夜間も安全かつ円滑に避難できるよう、ソーラライトや耐久性・弾力性に優れた踏板などを設置した。
参考→http://www.city.hitachi.lg.jp/shinsai/011/p039426_d/fil/02.pdf

旭町地区から日立駅前広場に通じる避難階段

・茨城県高萩市は、東日本大震災で津波被害があった沿岸部の東小学校と高萩中学校の校舎(3階又は4階建)および市営住宅の住棟(4階建)の屋上に通じる屋外階段を整備して津波からの緊急避難場所を合計10箇所確保した。このうち、高萩中学校では、4階建の北棟に650人、3階建の南棟に1,000人を収容可能である。
参考→「茨城新聞2014年12月1日記事」http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14173455234078

左から高萩市立東小学校、高萩中学校、高萩市営住宅に整備した避難階段

・茨城県日立市は、東日本大震災の経験を生かし、近くに高台がなく津波が溢水するおそれがある川沿いの留町地区に、従前ゲートボール場だった市有地を活用して高さ6m盛土して約400人を収容できる津波からの避難マウンド(築山)を整備した。避難マウンドには2箇所の階段の他に、避難行動要支援者の車椅子や車両が乗り付けられるようにスロープを設置した。留町地区は海抜1mで、整備した緊急避難場所は海抜7m、約400㎡の広さがあり、ソーラライトも整備されている。
参考→http://www.city.hitachi.lg.jp/shinsai/011/p039426_d/fil/02.pdf

日立市南部の留町に整備された津波からの避難マウンド(築山)

・高知県黒潮町では、町内各所の高台に避難階段を整備して津波からの緊急避難場所を確保しているが、停電した夜間でも避難階段が見えるように、踏板に△マークの蓄光材を埋め込んでいる。

△マークの畜光材を埋め込んだ黒潮町の津波避難階段(左側:昼間、右側:夜間)

(2) 津波避難タワー等の整備・管理

・高台への水平避難に時間を要し、周囲に鉛直避難が可能な既存の建物等がない地域では、津波避難タワー等を新設することが必要となる。

・ 津波避難タワー等の整備にあたっては、想定される津波に対して十分な高さがあり、想定される津波波力等に対しても安全な構造を有し、津波発生時に直ちに使用できるようにする必要がある。

・国土交通省港湾局は、2013年10月に「港湾部の津波避難施設に関する設計ガイドライン」を策定し、その規模や配置の方策や、構造や設備に関する留意事項についてとりまとめている。
→http://www.mlit.go.jp/common/001016931.pdf

(参考事例)
・青森県八戸市は、東日本大震災で津波被害を受けた多賀地区に高さ13m、80人収容の津波避難タワーを整備した。上部の北側と東側には雪避けルーバーを設置して居室型避難スペースと避難階段への積雪を防いでいる。

青森県八戸市多賀地区の津波避難タワー

・高知県中土佐町は、文化的景観重要地区に指定された久礼地区に、周辺景観に配慮した円柱型の津波避難タワーを整備した。高さは地上20mで、2層の避難階には400人の収容が可能である。コンクリート充填鋼菅の杭は地下28mの岩盤に3m岩着させ、避難階へは螺旋型のスロープと階段のほか、避難用のゴンドラを設置している。避難階には防災倉庫やエレベーターによる救助スペースを確保し、震度5以上の揺れで開く鍵箱には、防災倉庫や非常用扉の鍵を入れている。なお、休日は展望台として一般開放している。

周辺景観に配慮して整備した中土佐町の津波避難ビル(左側:全景、中央:避難階から海を見る、右側:避難階)

・2004年のスマトラ島沖地震に伴う津波で甚大な被害を受けたバンダアチェ市には、JICAが支援して建てた津波避難タワーが3棟あるが、普段はほとんど利用されていないことから、その活用が課題となっており、2016年には日本からの市民団体も参加してコミュニティ施設として活用するワークショップが開催された。

インドネシアのバンダアチェ市に整備された津波避難タワーの事例

(3) 土砂災害からの避難施設の整備・管理

・土砂災害からの指定緊急避難場所は、土砂災害警戒区域外に確保されているか点検するとともに、土砂災害警戒区域内にある場合には、崩壊土砂の衝撃に対して安全な構造になるように建築物を補強するとともに、速やかに開設できる管理体制を整えておく必要がある。

・高齢者施設等の避難行動要支援者が居住している施設が土砂災害警戒区域内に立地している場合は、避難準備・高齢者等避難開始の発令後速やかに避難できる体制を整える必要がある。また、万一の場合に備え、崩壊土砂の衝撃に対して安全な構造になるように建築物を補強することが望ましい。
参考→総務省「土砂災害防止対策に関する実態把握結果」http://www.soumu.go.jp/main_content/000192769.pdf