(1) 緊急避難場所の候補を広げる

・逃げ地図づくりは、避難目標地点を定めて、そこに至る避難経路の避難時間を可視化するが、その避難目標地点は必ずしも緊急避難場所とは限らない。つまり、津波の場合は、津波想定浸水区域外の境界線(想定される津波の遡上ライン)と道路・通路等の交点を避難目標地点としており、その多くは緊急避難場所として認識されているとは限らない。また、土砂災害の場合は、第一義的には土砂災害警戒区域外の安全な施設全てが避難目標地点となりうるが、大雨に備えて一時的にとどまることが可能な緊急避難場所の候補施設を避難目標地点として設定して逃げ地図を作成する。

・つまり、逃げ地図づくりは、避難目標地点の設定を通して、緊急避難場所の候補を広げ、もしくは絞り込む作業であり、その候補の中から緊急避難場所を指定することが重要である。

(2) 緊急避難場所と避難所を区別する

・切迫した災害の危険から逃れるための緊急避難場所として、津波や土砂災害などの災害の種別に、市町村長が指定した一定の安全性の基準を満たす施設又は場所をいう。

・従来の災害対策基本法では、危険を逃れる緊急避難場所と被災後に避難生活を送る避難所が明確に区別されておらず、緊急避難場所は災害の種別に分けて指定していなかったことから、東日本大震災では被害拡大の一因になった。このため、2013年6月に改正された災害対策基本法では、緊急避難場所と避難所を明確に区別し、災害種別に緊急避難場所を指定することを促した。

・高台の安全な区域内に位置する学校施設などのように、緊急避難場所と避難所を兼ねて指定することができる。
参照→http://shiga-bousai.jp/dmap/help/hinajo-teigi.pdf

・国土地理院では、2013年6月の災害対策基本法改正に伴い、緊急避難場所や災害種別をわかりやすく表示するため、下図の地図記号→http://www.gsi.go.jp/kikaku/kikaku20140423.htmlを定めた。

(3) 津波からの緊急避難場所

・津波からの緊急避難場所は、高台など安全な区域内、又は一定の基準を満たす津波避難ビルなどの施設や場所を指定するほか、逃げ地図づくりなどを通して、その候補を増やすことが重要である。内閣府の「津波避難ビル等に係るガイドライン」では、津波避難ビル等は、やむを得ず適用される緊急的・一時的な避難施設であり、その指定・普及の推進にあたって認識しておくべき最も重要な点は、津波から生命を守る可能性の高い手段を、地域内に少しでも多く確保していく姿勢であることを明言している。
http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h17/pdf/guideline.pdf

・災害対策基本法施行令第20条の3に定められた津波避難ビルなど安全な区域外にある指定緊急避難場所の基準は、次のとおりである。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S37/S37SE288.html
① 津波に伴う水圧等によって損壊、転倒等を生じない構造であること。
② 想定される津波の水位以上の高さに屋上その他居住者等受入部分が配置されていること。
③ 当該居住者等受入部分までの避難上有効な階段その他経路があること。

・参考までに、国土交通省国土技術政策研究所等が2012年2月に定めた「津波避難ビル等の構造上の要件の解説」には、津波荷重の算定式や木造を含めた設計例などが示されている。
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/files/2013/11/12_tsunami01.pdf

(4) 土砂災害からの緊急避難場所

・土砂災害からの緊急避難場所は、土砂災害警戒区域外の公的施設、又は土砂災害警戒区域内の一定の基準を満たす施設を指定するほか、逃げ地図づくりなどを通して、その候補を増やすことが重要である。国土交通省砂防部の「土砂災害警戒避難ガイドライン」では、民間施設を一時的な避難場所として協定を結ぶなどして、できる限り最寄りに安全な避難場所の確保に努めることを示唆している。
→http://www.mlit.go.jp/common/001087388.pdf

・土砂災害特別警戒区域においては、居室を有する建築物を崩壊土砂の衝撃に対して安全な構造にすることが求められており、土砂災害警戒区域内の指定緊急避難場所についてはこれに準拠した安全な構造にすることが望ましい。具体的な構造基準は、建築基準法に基づく政令で、土砂災害の原因となる自然現象ごとに定められている。
(参考)→http://www.takashio.pref.hiroshima.jp/portal/kaisetsu/keikaihelp/05_07.htm