(1) 逃げ地図の展示・掲示

・作成した逃げ地図は、逃げ地図づくりワークショップの参加者で共有するだけでなく、学校や集会所等の公共施設等に展示・掲示して、地域コミュニティの構成員に対し幅広く周知することが重要である。その際、逃げ地図づくり参加者のコメントをつけると効果的である。

・展示・掲示した逃げ地図を見て、気がついた点をコメントできるようにしておくと、逃げ地図づくりワークショップの当日に参加できなかった人の意見を集約することができる。

・観光客等の地区外からの来街者が滞在する宿泊施設等には、作成した逃げ地図を掲示して来街者に対して避難場所を周知することが重要である。
・展示・掲示する逃げ地図は書き直し(リライト)した方が読みやすいが、手書きのものでも十分に記載内容を伝えることができる。

 

●参考事例
鎌倉市立第一中学校では、作成した逃げ地図を廊下に展示して、気がついたことを付箋に書いてコメントできるようにした。

鎌倉一中の廊下に展示された逃げ地図

陸前高田市立高田東中学校では、作成した逃げ地図を文化祭に展示した際に、逃げ地図づくりの趣旨と方法、作成時の様子の写真、作成した生徒の感想も展示した。文化祭には、地域住民も多数訪れ、その後、高田東中学校区の各地区(米崎・小友・広田)において地域住民らによる逃げ地図づくりが行われた。

高田東中の文化祭で展示された逃げ地図

(2) 逃げ地図の書き直し(リライト)

・展示する逃げ地図は、逃げ地図ワークショップで作成された手書きの成果を展示するだけでも効果的であるが、書かれた内容を的確に伝えるには、その目的を留意しつつ、書き直すことが望ましい。

・Illustrator、Photoshopを使った逃げ地図の書き直し(リライト)の方法を示す。

① WS直後
・ワークショップで作った逃げ地図の写真を撮る。コメントの書いてあるポストイットが貼ってあるものと、ポストイットを外したもの両方を撮影する。撮影後はポストイットを貼り直す。
・撮影したデータはPhotoshop等を使い、トリミングや歪みの修正をしておく。

② 色塗りのデータ化
・WS前につくったベースマップをもとにつくる。
・ベースマップのイラレデータで、新しいレイヤーをつくり、ワークショップの逃げ地図画像(ポストイットなし)を取り込む。
・画像のサイズを調整し、ベースマップに合わせる。
・画像の透明度を調整し、ベースマップが見えるようにする。
・色塗り用レイヤーをつくる。
・ペンツールで画像に合わせて道に色を塗る。
緑:C 100%, M 0%, Y 100%, K 0% , 黄緑:C 50%, M 0%, Y 100%, K 0%
黄色:C 0%, M 0%, Y 100%, K 0% , 橙:C 0%, M 50%, Y 100%, K 0%
赤:C 0%, M 100%, Y 100%, K 0% , 紫:C 50%, M 100%, Y 0%, K 0%
茶色:C 500%, M 100%, Y 100%, K 50% , 黒:C 100%, M 100%, Y 100%, K 100%
・ その他避難場所(◯,◎)、避難目標ポイント(●)、避難方向(→)もマッピングする。

③ コメントの分類
・WS中に出たコメント(ポストイット)を、その内容ごとに以下の5つに分類する。
地区の概要(茶色)
震災時等の記録(緑)
計画事業等(青) 復興事業・防災計画等
避難時のポイント(黒)
検討課題(赤)
・分類した意見は、上記の色の文字で地図に載せる。下の図のように、透明度30%ほどの白塗りの四角を背景にすると見やすい。
・場所が限定されている意見は、関連する場所(ポストイットが貼ってあった場所)に載せ、その地区全体に関する意見はまとめて載せる。

コメントの分類

④レイアウト
・タイトル(○○市○○町逃げ地図 等)
・ワークショップ開催日、地図作成日、主催・共催・後援・協力者等
・縮尺、方位、逃げ地図のカラーバー
・凡例(緊急避難場所、避難目標地点、避難方向、高台、海面・水面、コメント色分け 等)
以上を地図に載せ、レイアウトを整える。

(3) 逃げ地図の配布

・ 作成した逃げ地図を配布する際には、その目的を確認した上で、記載されたコメント等を取捨選択し、書き直し(リライト)した方が望ましい。

・ ゼンリンなどの市販の地図を用いた逃げ地図を配布する場合には、新たに申請書を提出して許諾を得る必要がある。

・学校のイベントにおいて子どもたちが作成した手書きの逃げ地図を配布する方法は、広く成果を周知するだけでなく、世代間の連携を図る上でも効果的である。

 

●参考事例

陸前高田市広田町では、住民に広報する逃げ地図は、「避難上の留意事項」と「整備事業関連事項」の2種類にして、後者は避難に係る整備事業の情報のみを記載することにした。その代わり、地区毎に「課題図」と題した逃げ地図を作成し、「整備計画に対する意見」と「防災対策の検討課題」のほとんどを掲載した。「震災からの教訓」も1/5程度採用し、色分けした枠内に記述した。広報版は、的確な表現に改めて各地区の役員に確認・修正を依頼したが、「課題図」はほぼそのまま掲載した。リライトした地図には、市が指定した「一次避難場所」と「二次避難所」を記し、広田町は井戸の位置等も記して防災マップとして活用できるようにした。

陸前高田市小友町では、国土地理院発行の災害復興計画基図(1/2,500)をベースマップにして逃げ地図を作成し、ワークショップ中のコメントを整理・取捨選択した掲載してリライトした逃げ地図を印刷して2015年5月に小友地区の全戸に配布した。

陸前高田市広田町では、住民および関係行政機関に報告するとともに、広報版を各地区公民館等に掲示した。また、広田町の「課題図」は、広田地区の被災した低地部の土地利用に関する復興まちづくり計画の基礎資料として活用された。

陸前高田市の小友町と広田町の逃げ地図作成WSのコメントの分類・整理
※小友町の分類項目の名称
注)(A):WSで出されたコメント総数、●(B):住民への周知用に採用したコメント(数)、○(C):広田町において課題図に採用したコメント(数)
左:広田町の逃げ地図(住民向け広報版)の一部
右:広田町の地区毎に作成された「課題図」の一部
出典:白幡玲子・山本俊哉・神谷秀美・谷口景一朗・羽鳥達也・木下勇「陸前高田市において作成された逃げ地図の整理と表現の方法 -逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(10)- 」日本建築学会大会(関東)学術講演梗概集, 2014年9月6日

秩父市上白久地区では、作成した逃げ地図は町会指定の避難場所に掲示するだけでなく、全戸に配布して自宅の見えやすい場所に掲示するように促した。

下田市立朝日小学校では、毎年2月に開催される「はまぼう発表会」(保護者や地域住民に対する児童たちの研究発表会)において、6年生が自ら作成した3種類の手書きの逃げ地図と緊急避難場所の写真とコメント入りの防災パンフレットを配布したところ、来場した保護者や地域住民の反響が大きく、そのうわさを聞いた県の土木事務所が会議資料として使用するまで広がった。

2015年度に小学6年生が作成して保護者や地域住民に配布された逃げ地図と防災パンフレット